Applied Physics — Master Course

運動方程式は
微分方程式である。

この教材は、試験対策プリントの全30問を「解ける」レベルを超えて、その1.5倍難しい問題──空気抵抗つき投げ上げ、位相を含む単振動、ポテンシャル図による運動の解析、宇宙速度の一般論──を初見で処理できる思考体系を組み立てるための解説書です。演習問題はありません。すべてを概念と本質の解説だけで貫きます。

PROLOGUEこの教材の設計思想

高校物理では「\(v = v_0 + at\)」「\(x = v_0 t + \frac{1}{2}at^2\)」という公式を暗記して使いました。しかし応用物理では発想が根本から変わります。公式は覚えるものではなく、微分方程式を解いて毎回その場で作り出すものになります。

プリントの全30問を貫く構造はたった一本の線です。

$$\text{力を見つける} \;\longrightarrow\; F = m\frac{dv}{dt}\;\text{(微分方程式)} \;\longrightarrow\; \text{解く} \;\longrightarrow\; v(t),\ x(t)$$

そして「1.5倍難しい問題」とは、この線のどこかが少しだけ複雑になった問題にすぎません。力が定数でなく速度や位置に依存する、初期条件が2つ同時につく、エネルギーの視点への乗り換えが必要になる──それだけです。だからこの教材では、個々の問題の解き方ではなく、線そのものの各パーツを完全に理解することを目指します。パーツが完全なら、どんな組み合わせが来ても組み立てられます。

到達目標

「加速度が定数の運動」だけでなく、力が \(t\)・\(v\)・\(x\) のどれに依存していても、対応する微分方程式を立てて解けること。さらに、微分方程式を解かずにエネルギー保存で近道できる場面を見抜けること。この2つが揃えば、プリントの1.5倍レベルは「初見だが手が動く」状態になります。

CHAPTER 1微分 ─「変化率」という一つの思想

1.1 微分の定義に立ち返る

微分は「公式で計算するもの」の前に、まず一つの問いです。「関数 \(f(x)\) は、点 \(x\) のまさにその瞬間、どれくらいの勢いで変化しているか?」

\(x\) から \(x + \Delta x\) までの平均の変化率は

$$\frac{f(x+\Delta x) - f(x)}{\Delta x}$$

です。分子は「増えた量」、分母は「かけた幅」。これは区間全体の平均にすぎません。そこで幅 \(\Delta x\) を限りなく0に近づけます。

$$\frac{df}{dx} = \lim_{\Delta x \to 0}\frac{f(x+\Delta x)-f(x)}{\Delta x}$$

これが導関数の定義です。グラフでいえば、2点を結ぶ直線(割線)の傾きが、2点を近づけるにつれて接線の傾きに収束していく、その極限値です。

x x+Δx 接線(微分の値) 割線(平均変化率) x f
図1-1 赤い割線の傾きは区間の平均変化率。Δx→0 で青い接線の傾き(=微分係数)に一致していく。物理では「x軸が時間、縦軸が位置」と読み替えれば、この傾きがそのまま速度になる。

1.2 なぜ \(x^n\) の微分は \(nx^{n-1}\) なのか

暗記でなく仕組みを見ます。\(f(x)=x^2\) で定義どおり計算すると

$$\frac{(x+\Delta x)^2 - x^2}{\Delta x} = \frac{2x\,\Delta x + (\Delta x)^2}{\Delta x} = 2x + \Delta x \;\xrightarrow{\;\Delta x \to 0\;}\; 2x$$

展開したとき、\(\Delta x\) の1次の項だけが生き残り、2次以上の項(\((\Delta x)^2\) など)は極限で消えます。\(x^n\) を二項展開しても同じことが起き、1次の項の係数が \(nx^{n-1}\) です。「微小量の2次以上は無視できる」──この感覚は物理全体で繰り返し使う根本原理です。

1.3 sin・cos・指数・対数の微分の本質

関数導関数本質的な理由
\(\sin x\)\(\cos x\)微小角では \(\sin\Delta x \approx \Delta x\)、\(\cos\Delta x \approx 1\)。加法定理に入れると \(\cos x\) だけが残る。
\(\cos x\)\(-\sin x\)sinを90°ずらしたものがcos。微分は「90°位相を進める」操作なので、sin→cos→−sin→−cos→sin と4回で一周する。
\(e^{x}\)\(e^{x}\)\(e\) は「微分しても自分自身に戻る」ように選ばれた数(約2.718)。定義そのもの。
\(\log x\)\(\dfrac{1}{x}\)\(y=\log x \Leftrightarrow x = e^{y}\)。指数の微分から逆算すると \(1/x\) が出る。(物理では log は自然対数)
1.5倍レベルの視点

「微分は sin↔cos を回し、\(e^x\) を不変に保つ」──この2つの事実が、後の単振動(微分方程式 \(\ddot{x}=-\omega^2 x\) の解が三角関数になる理由)と空気抵抗(\(\dot v = -\lambda v\) の解が指数関数になる理由)を丸ごと説明します。微分方程式は「どの関数が、微分に対してどう振る舞うか」を知っていれば、答えの形を先に予想できるのです。

1.4 合成関数の微分(連鎖律)── 物理で最重要の道具

\(f(x) = \sin 2x\) のような「関数の中に関数」がある場合、外側と内側を別々に微分して掛けます。

$$\frac{d}{dx}f(g(x)) = f'(g(x))\cdot g'(x)$$

直感的には、\(u = g(x)\) と置くと変化率が2段階でリレーされるからです。\(x\) が動くと \(u\) が \(g'(x)\) 倍の速さで動き、\(u\) が動くと \(f\) が \(f'(u)\) 倍の速さで動く。全体では掛け算になります。

$$\frac{df}{dx} = \frac{df}{du}\cdot\frac{du}{dx}$$

プリント第1問はすべてこれです。

物理での使われ方はもっと重要です。円運動の \(x(t) = r\cos\omega t\) を \(t\) で微分すると、内側 \(\omega t\) の微分 \(\omega\) が毎回外に出てきます。微分するたびに \(\omega\) が1つ掛かる──だから速さは \(r\omega\)、加速度の大きさは \(r\omega^2\) になります。係数の由来はすべて連鎖律です。

1.5 積の微分 ── エネルギー定理の伏線

後の第7章で決定的に使うので、ここで積の微分も押さえます。

$$\frac{d}{dt}\bigl(f\,g\bigr) = \frac{df}{dt}\,g + f\,\frac{dg}{dt}$$

特に \(f = g = v(t)\) とすれば

$$\frac{d}{dt}\bigl(v^2\bigr) = 2v\frac{dv}{dt} \quad\Longrightarrow\quad \frac{d}{dt}\Bigl(\tfrac{1}{2}mv^2\Bigr) = m v\frac{dv}{dt}$$

右辺に運動方程式の \(m\frac{dv}{dt}\) が現れていることに注目してください。運動エネルギー \(\frac{1}{2}mv^2\) の時間変化は、力と速度の積(=仕事率)に等しい。エネルギー保存則は、実はこの1行から生まれます(7.2節で完成させます)。

CHAPTER 2積分 ─ 逆再生と「足し合わせ」

2.1 積分の第一の顔:微分の逆再生

「微分すると \(f(x)\) になる関数」を \(f(x)\) の原始関数といい、それを求める操作が不定積分です。

$$\int 2x\,dx = x^2 + C$$

ここで必ず現れる積分定数 \(C\) は、数学的には「定数を微分すると消えるため復元できない情報」ですが、物理的にはもっと具体的な意味を持ちます。

核心

積分定数 \(C\) の正体は「初期条件」である。微分方程式 \(\frac{dv}{dt}=3.0\) を積分すると \(v(t)=3.0t+C\)。加速度の情報だけでは「時刻0にどんな速度だったか」までは決まらないから、解には自由度 \(C\) が残ります。そこに \(v(0)=2.0\) という初期条件を差し込むと \(C=2.0\) と確定し、運動が一つに定まる。「積分1回につき定数1個、それを消すのが初期条件1個」──この対応関係は微分方程式を解くときの背骨です。2階の微分方程式(単振動)で定数が2個(\(A, B\))出てきて、初期条件も2個(初期位置と初速度)必要になるのは、この対応の必然です。

2.2 積分の第二の顔:微小量の総和

定積分にはもう一つの顔があります。区間を細かく刻んで「(高さ)×(微小幅)」を全部足す操作です。

$$\int_a^b f(x)\,dx = \lim \sum f(x_i)\,\Delta x$$

この「足し合わせ」の顔こそ、物理での積分の使い方の本体です。

力が場所によって変わるばね(\(F=-kx\))の仕事が \(\int(-kx)dx\) という積分で計算される理由は、「各瞬間の力×微小移動」を刻んで足しているからです。力が一定なら \(W=F\Delta x\) という掛け算で済むが、力が変わるなら積分に格上げする──この「一定なら掛け算、変化するなら積分」という対応は、物理量のあらゆる場面で成り立つ翻訳規則です。

2.3 「微分方程式を解く」とはどういうことか

プリント第8問 \(\frac{dy}{dx}=2x\) は、最も単純な微分方程式です。「解く」とは、導関数についての情報から、元の関数そのものを復元すること。右辺が積分変数(この場合 \(x\))だけの関数なら、両辺をそのまま積分すれば復元できます。

$$\frac{dy}{dx}=2x \;\Longrightarrow\; y = \int 2x\,dx = x^2 + C$$

ただし、右辺に未知関数そのものが入っている場合(例:\(\frac{dv}{dt} = -2.0v\))は、この単純積分が使えません。右辺の \(v\) が \(t\) の未知関数なので「\(t\) で積分」が実行できないからです。この壁を越える技術(変数分離法)が第5章の主役になります。ここでは「右辺に何が入っているかで解き方が変わる」という視点だけ持ってください。この視点が、微分方程式の全体地図の分類基準になります。

CHAPTER 3ベクトル ─ 向きを持つ量の計算法

3.1 成分で扱えばベクトルはただの「数の組」

位置・速度・加速度・力は、大きさと向きを持つ量=ベクトルです。成分表示 \(\vec{A}=(A_x,A_y,A_z)\) にしてしまえば、和・差・定数倍はすべて成分ごとの計算に分解されます。

$$3\vec{A}-\vec{B} = (3A_x-B_x,\; 3A_y-B_y,\; 3A_z-B_z)$$

大きさは三平方の定理の3次元版です。

$$|\vec{A}| = \sqrt{A_x^2+A_y^2+A_z^2}$$

3.2 内積の二つの顔 ── 仕事の定義に直結する

内積には計算用の顔と、意味を表す顔の2つがあり、両方使えることが重要です。

$$\vec{A}\cdot\vec{B} = A_xB_x + A_yB_y + A_zB_z = |\vec{A}||\vec{B}|\cos\theta$$

仕事の定義 \(W = F\Delta x\cos\theta\)(プリント第23問)は、まさに内積 \(\vec{F}\cdot\Delta\vec{x}\) です。\(\cos\theta\) は「力のうち、移動方向に効いている割合」。\(\theta = 90^\circ\) なら仕事ゼロ(垂直抗力や円運動の向心力が仕事をしない理由)、\(\theta > 90^\circ\) なら負の仕事(摩擦がエネルギーを奪う理由)。内積の符号 = エネルギーを与えているか奪っているかという物理的意味まで含めて理解してください。

3.3 ベクトルの微分は「成分ごとの微分」

位置ベクトル \(\vec{r}(t)=(x(t),y(t))\) の微分は、各成分を独立に微分するだけです。

$$\vec{v}(t)=\frac{d\vec{r}}{dt}=\left(\frac{dx}{dt},\ \frac{dy}{dt}\right)$$

これは見かけ以上に強力な事実です。2次元・3次元の運動は、各軸の1次元運動を並行して解けばよいことを意味するからです。水平投射(プリント第6問)で、x方向は等速・y方向は等加速度と完全に独立に扱えるのはこの性質のおかげです。1.5倍レベルの斜方投射でも、初速度を \((v_0\cos\theta,\ v_0\sin\theta)\) に分解した瞬間、問題は「等速」と「投げ上げ」という既知の1次元問題2つに還元されます。

CHAPTER 4運動学の中心原理 x → v → a

4.1 定義そのものを腹に落とす

$$v(t) = \frac{dx}{dt}, \qquad a(t) = \frac{dv}{dt} = \frac{d^2x}{dt^2}$$

速度は「位置の時間変化率」、加速度は「速度の時間変化率」。これは公式ではなく定義です。x-tグラフの接線の傾きが速度、v-tグラフの接線の傾きが加速度。プリント第4〜7問(等加速度・円運動・水平投射・単振動)は、位置の式が与えられていて、微分を2回実行するだけの問題です。ここで訓練されているのは計算力ではなく、「位置・速度・加速度は微分の鎖でつながった一つの家族だ」という世界観です。

x(t) v(t) a(t) 微分 微分 積分+初期条件 積分+初期条件
図4-1 右向き(微分)は情報を失わないが、左向き(積分)は1回ごとに初期条件を1つ要求する。力学の問題はほぼすべて「a から出発して左へ2歩戻る旅」である。

4.2 逆再生:a から v へ、v から x へ

力学の実戦では、運動方程式から先に分かるのは加速度です。そこから積分で速度・位置を復元します。プリント第9問の構造を一般化すると:

  1. \(\dfrac{dv}{dt} = a_0\)(既知)を \(t\) で積分 → \(v(t) = a_0 t + C\)
  2. 初期条件 \(v(0)=v_0\) を代入して \(C = v_0\) を確定
  3. \(\dfrac{dx}{dt} = a_0 t + v_0\) をさらに積分 → \(x(t) = \frac{1}{2}a_0t^2 + v_0 t + D\)
  4. 初期条件 \(x(0)=x_0\) で \(D=x_0\) を確定

高校で暗記した等加速度公式は、この手続きの結果にすぎません。手続き自体を身につければ、加速度が定数でない場合(摩擦後の折り返し、空気抵抗、ばね)にもまったく同じ流れで進めます。

4.3 変位と移動距離 ── 折り返しの正しい処理1.5×

プリント第12問(減速して折り返す運動)が試しているのは、この区別です。

本質は「\(v\) の符号が途中で変わるかどうか」です。変わらなければ両者は(大きさとして)一致し、変わるなら\(v=0\) となる時刻で区間を切って、各区間の変位の絶対値を足す必要があります。v-tグラフで見ると、変位は「符号付き面積」、移動距離は「面積の絶対値の和」です。

落とし穴

「\(t=6.0\) sの位置は12 m。だから進んだ距離も12 m」は誤り。この運動は \(t=4.0\) sで折り返している(\(v(4.0)=0\))ので、16 m進んで4 m戻った合計20 mが移動距離。1.5倍レベルの問題では折り返しが2回ある運動(単振動の1周期の道のり=振幅の4倍、など)も同じ原理で処理する。まず \(v(t)=0\) の時刻をすべて求め、そこで区間を切る──これが万能手順。

CHAPTER 5微分方程式の解法体系 ─ 4つの型

ここが本教材の心臓部です。運動方程式 \(m\frac{dv}{dt}=F\) の右辺 \(F\) が何の関数かで、解き方は完全に分類できます。プリントの全問題も、その1.5倍レベルの問題も、必ず次の4つの型のどれか(またはその組み合わせ)に落ちます。

方程式の形力の例解法解の形
A\(\dfrac{dv}{dt}=f(t)\)
(定数含む)
重力・一定の摩擦力・一定の外力両辺を \(t\) で直接積分多項式
B\(\dfrac{dv}{dt}=-\lambda v\)速度比例の抵抗のみ変数分離指数減衰 \(e^{-\lambda t}\)
C\(\dfrac{dv}{dt}=-\lambda v + g\)重力+空気抵抗平行移動して型Bへ終端値に指数で漸近
D\(\dfrac{d^2x}{dt^2}=-\omega^2 x\)ばねの復元力解を仮定して代入三角関数(振動)
型A

右辺が \(t\) だけの関数 → 直接積分

右辺に未知関数 \(v\) が含まれないので、2.3節の通り両辺をそのまま \(t\) で積分できます。定数はその特別な場合です。

$$\frac{dv}{dt}=a_0 \;\Rightarrow\; v = a_0 t + C \;\Rightarrow\; \frac{dx}{dt}=a_0t+C \;\Rightarrow\; x = \tfrac12 a_0 t^2 + Ct + D$$

プリント第9〜17問はすべてこの型です。摩擦(第13・16問)や自由落下(第17問)は、まず運動方程式を立てて右辺が定数であることを確認する段階が加わるだけで、微分方程式としては同一物です。摩擦の場合の前処理を明示すると:鉛直方向のつり合いから \(N=mg\)、動摩擦力の大きさは \(\mu' N = \mu' mg\)、運動と逆向きだから運動方程式は \(m\frac{dv}{dt} = -\mu' mg\)、よって \(\frac{dv}{dt}=-\mu' g\)(質量が消えることに注目──摩擦による減速は質量によらない)。

型B

右辺に \(v\) 自身が入る → 変数分離

\(\frac{dv}{dt}=-\lambda v\) は、右辺が \(t\) の未知関数 \(v(t)\) を含むため直接積分できません。そこで「\(v\) を含む項を左辺へ、\(t\) を含む項(dt)を右辺へ」完全に分離します。

$$\frac{dv}{v} = -\lambda\,dt \;\Longrightarrow\; \int\frac{dv}{v} = -\lambda\int dt \;\Longrightarrow\; \log|v| = -\lambda t + C$$

両辺を \(e\) の指数に乗せて

$$|v| = e^{C}e^{-\lambda t} \;\Longrightarrow\; v(t) = D\,e^{-\lambda t}\quad(D=\pm e^{C})$$

初期条件 \(v(0)=v_0\) から \(D=v_0\)。よって \(v(t)=v_0 e^{-\lambda t}\)。

解の読み方がこの型の本質です。

さらに位置を積分すると(プリント第21問)

$$x(t) = \int_0^t v_0 e^{-\lambda t'}dt' = \frac{v_0}{\lambda}\bigl(1-e^{-\lambda t}\bigr) \;\xrightarrow{t\to\infty}\; \frac{v_0}{\lambda}$$

無限に走り続けるのに、進む距離は有限値 \(v_0/\lambda\) に収束する。第21問で \(x\to 8.0/2.0 = 4.0\) mとなるのはこの一般式の一例です。指数減衰の「無限の時間・有限の総量」という性質は、直感に反するからこそ試験で狙われます。

型C

右辺が「\(v\) の1次式」→ 平行移動して型Bに帰着1.5×

空気中の落下(プリント第18問):\(m\frac{dv}{dt} = mg - Av\)(下向き正)。整理して

$$\frac{dv}{dt} = -\frac{A}{m}\Bigl(v - \frac{mg}{A}\Bigr)$$

ここで発想の転換です。右辺が0になる特別な速度 \(v_\infty = \frac{mg}{A}\) が存在します。この速度では加速度が0、つまり重力と抵抗がつり合って等速になる──これが終端速度です。そこで「終端速度からのズレ」\(V = v - v_\infty\) を新しい変数に取ると、\(v_\infty\) は定数なので \(\frac{dV}{dt}=\frac{dv}{dt}\) であり

$$\frac{dV}{dt} = -\frac{A}{m}V$$

と、型Bそのものに化けます。解は \(V = V(0)\,e^{-At/m}\)。静止から落とせば \(V(0)=0-v_\infty=-v_\infty\) なので

$$v(t) = \frac{mg}{A}\Bigl(1-e^{-\frac{A}{m}t}\Bigr)$$

この型の思想を一般化して覚えてください:「まずつり合いの状態(右辺=0の解)を見つけ、そこからのズレを変数に取り直すと、ズレは純粋な指数減衰に従う」。1.5倍レベルの問題──例えば初速 \(v_0\) を持って空気中を落ち始める場合や、上向きに投げ上げて空気抵抗を受ける場合──も、この同じ操作で \(v(t) = v_\infty + (v_0 - v_\infty)e^{-\lambda t}\) と一発で書けます。「初期値と終端値を指数関数で橋渡しする」という解の構造は、電気回路(コンデンサ充電)や熱伝導(ニュートンの冷却)にもそのまま現れる、物理で最も普遍的なパターンの一つです。

型D

右辺に \(-\omega^2 x\)(2階)→ 解を仮定して代入する

ばね(プリント第19・22問):\(m\ddot{x} = -kx\)、すなわち

$$\frac{d^2x}{dt^2} = -\frac{k}{m}\,x$$

この式の言葉:「2回微分すると、自分自身のマイナス定数倍に戻る関数を探せ」。1.3節で見た通り、微分で自分の仲間に戻る関数は三角関数(4回で一周=2回でマイナス)です。そこで解を仮定します。

$$x(t) = A\sin\omega t + B\cos\omega t$$

2回微分すると \(\ddot{x} = -\omega^2(A\sin\omega t + B\cos\omega t) = -\omega^2 x\)。代入して恒等的に成り立つ条件から

$$\omega^2 = \frac{k}{m} \;\Longrightarrow\; \omega = \sqrt{\frac{k}{m}}$$

角振動数はばねと質量だけで決まり、初期条件(どれだけ引っ張ったか)にはよらない──これが単振動の「等時性」です。残った \(A, B\) は2階方程式ゆえの2つの自由度で、初期条件2つで確定します:

初期条件物理的な状況
\(x(0)=x_0,\ v(0)=0\)\(x = x_0\cos\omega t\)引っ張って静かに放す(第19問)
\(x(0)=0,\ v(0)=v_0\)\(x = \dfrac{v_0}{\omega}\sin\omega t\)自然長の位置で突く(第22問)。振幅は \(v_0/\omega=v_0\sqrt{m/k}\)

1.5倍レベル:両方の初期条件が同時にゼロでない場合。1.5× 解は \(x = \frac{v_0}{\omega}\sin\omega t + x_0\cos\omega t\) となりますが、これは三角関数の合成で単一のサイン波にまとめられます。

$$x(t) = R\sin(\omega t + \varphi),\qquad R=\sqrt{x_0^2+\Bigl(\frac{v_0}{\omega}\Bigr)^2},\quad \tan\varphi = \frac{x_0\,\omega}{v_0}$$

\(R\) が振幅、\(\varphi\) が初期位相です。「sinとcosの重ね合わせ=振幅と位相を持つ一つの振動」という見方に慣れると、単振動の問題は初期条件がどう複雑でも同じ一本道になります。また振幅は後述のエネルギー保存 \(\frac12 kR^2 = \frac12 kx_0^2 + \frac12 mv_0^2\) からも独立に検算でき、確かに同じ \(R\) が得られます(2つの方法が一致することを確認する習慣が、1.5倍レベルでの武器になります)。

この章の総括

問題を見たら最初にやることは計算ではなく分類です。「運動方程式を立てる → 右辺を見る → \(t\) だけなら直接積分(A)、\(v\) の1次なら分離か平行移動(B・C)、\(-\omega^2x\) なら振動解を仮定(D)」。この分岐さえ正しければ、あとは各型の決まった手続きが答えまで運んでくれます。

CHAPTER 6代表的な運動の完全解剖

6.1 等加速度直線運動 ── 公式は「作る」もの

加速度 \(a_0\)、初速度 \(v_0\)、初期位置 \(x_0\) なら、型Aの手続きで毎回導けます:

$$v(t)=a_0t+v_0,\qquad x(t)=\tfrac12 a_0t^2+v_0t+x_0$$

v-tグラフで見ると、変位は台形の面積(積分)です。もう一つ、時刻を消去した関係式も導いておくと便利です。\(t=(v-v_0)/a_0\) を \(x\) の式に代入すると

$$v^2 - v_0^2 = 2a_0(x-x_0)$$

「時間を聞かれていない問題」ではこの式が最短経路になります。実はこの式、後で示すエネルギー定理(\(\frac12mv^2-\frac12mv_0^2 = F\Delta x\))を \(m\) で割ったものと同一です。運動学の式とエネルギーの式は、同じ内容の別表現──この視点が第7章への橋になります。

6.2 落下・投げ上げ・水平投射 ── 座標軸を自分で決める

重力だけが働く運動では、加速度は常に「鉛直下向きに \(g\)」で一定。問題ごとに違うのは座標軸の取り方と初期条件だけです。

運動軸の取り方加速度初期条件
自由落下(第17問)下向き正\(+g\)\(v(0)=0,\ y(0)=0\)
投げ上げ(第14問)上向き正\(-g\)\(v(0)=v_0,\ y(0)=0\)
水平投射(第6問)x水平・y上向き\((0,\,-g)\)\((v_0,\,0)\)、高さ \(h\)

符号の混乱はすべて「軸を決めてから、すべての量をその軸の符号で書く」を徹底すれば消えます。投げ上げで落下時刻を求める場面(第14問2)では、2次方程式の解が2つ出ますが、\(t>0\) という物理的条件で選別する──数学が出した候補を物理が審査する、この役割分担も定石です。負の解 \(t = (v_0-\sqrt{v_0^2+2gh})/g\) にも実は意味があり、「もし過去からこの放物運動が続いていたなら、地面の高さを通過していたはずの時刻」を表します。数式は運動を過去にも未来にも延長して答えてくるのです。

6.3 摩擦による減速 ──「止まった後」に注意1.5×

第13問の解 \(v(t)=-4.90t+9.80\) は、\(t=2.00\) sで \(v=0\) になります。ではその後、この式に従って速度は負になり、物体は戻ってくるのでしょうか? 戻りません。

重要な概念

動摩擦力は「運動と逆向き」に働く力です。物体が止まった瞬間、動摩擦力は消滅し(静止摩擦に切り替わり)、他に力がなければ物体はそのまま静止します。つまり解いた式には有効期間がある:\(v(t)=-4.90t+9.80\) は \(0\le t\le 2.00\) sでのみ正しく、それ以降は \(v=0\)。微分方程式の解は「立てた運動方程式が成り立つ間だけ」の解である──1.5倍レベルの問題(斜面上で摩擦を受けて往復する運動など)では、状況が変わるたびに運動方程式を立て直し、直前の状態を新しい初期条件として接続するという「区分けして解く」技術が問われます。

6.4 等速円運動 ── 微分が明かす向心加速度の正体

位置 \(\vec r(t)=(r\cos\omega t,\ r\sin\omega t)\) を微分していくと(連鎖律で毎回 \(\omega\) が出る):

$$\vec v = (-r\omega\sin\omega t,\ r\omega\cos\omega t),\qquad \vec a = (-r\omega^2\cos\omega t,\ -r\omega^2\sin\omega t)$$

ここから3つの本質が読み取れます。

  1. \(\vec a = -\omega^2\,\vec r\)。加速度は位置ベクトルの逆向き、つまり常に中心を向く。「向心加速度」の名の由来が、計算から自動的に出てくる。
  2. 速さは \(|\vec v| = r\omega\)(一定)、加速度の大きさは \(|\vec a| = r\omega^2 = \dfrac{v^2}{r}\)。速さが変わらないのに加速度がある──加速度は「速さの変化」ではなく「速度ベクトルの変化」だから。向きを変え続けること自体が加速である。
  3. \(\vec v\cdot\vec r = 0\)(成分計算で確認できる)。速度は常に半径と垂直=円の接線方向。したがって向心力は運動方向と常に垂直で、仕事をしない。だから円運動では速さが保たれる──内積・仕事・エネルギーが一本につながる。

この \(\vec a = -\omega^2 \vec r\) という形は、型Dの \(\ddot x = -\omega^2 x\) と同じ形をしています。実際、等速円運動を1つの軸に射影(影を落と)すと単振動になる。円運動と単振動は同じ数学の2つの姿であり、単振動の \(\omega\) を「角振動数」と呼ぶのはこの対応のためです。

6.5 単振動 ── 全物理量の一覧と位相の感覚

\(x = A\sin\omega t\) のとき、微分の連鎖から:

$$x = A\sin\omega t,\quad v = A\omega\cos\omega t,\quad a = -A\omega^2\sin\omega t$$

6.6 空気抵抗を受ける落下 ── グラフで理解を仕上げる

型Cの解 \(v(t)=v_\infty(1-e^{-t/\tau})\)(\(v_\infty = mg/A\)、\(\tau=m/A\))の振る舞い:

τ = m/A v∞ = mg/A(終端速度) v(t) t v 初期の傾き = g
図6-1 落下開始直後は抵抗が小さく傾き(加速度)はほぼ g。速度が増すと抵抗が育って加速が鈍り、v∞ に漸近する。初期の接線を延長すると、ちょうど t = τ で終端速度の高さに達する──時定数の図形的意味。

CHAPTER 7仕事とエネルギー ─ 積分としての再構成

7.1 仕事の定義:\(W=\int F\,dx\)

力が一定なら \(W = F\Delta x\cos\theta\)(内積)。力が位置で変わるなら積分に格上げします:

$$W = \int_{x_1}^{x_2} F(x)\,dx$$

ばね(第24・25問)なら \(W=\int(-kx)dx = [-\frac12kx^2]\)。積分区間の端の代入だけで決まる点に注目してください。符号の意味も再確認します:正の仕事=力が運動を後押ししエネルギーを与える、負の仕事=力が運動に逆らいエネルギーを奪う。第25問3のように「質点がばねにする仕事」は、作用反作用で力の符号が反転するため、ばねが質点にする仕事とちょうど符号が逆(15 Jと−15 J)になります。エネルギーの受け渡しとして見れば当然の対称性です。

7.2 仕事エネルギー定理の導出 ── 1行の連鎖律が生む大定理1.5×

ここが力学全体で最も美しい導出です。運動方程式の両辺に \(v\) を掛けます:

$$m\frac{dv}{dt}v = Fv$$

左辺は1.5節で準備した通り \(\dfrac{d}{dt}\Bigl(\dfrac12mv^2\Bigr)\) に等しい。両辺を時刻 \(t_1\) から \(t_2\) まで積分すると、右辺は \(\int Fv\,dt = \int F\frac{dx}{dt}dt = \int F\,dx = W\)(置換積分)。よって

$$\frac12 mv_2^2 - \frac12 mv_1^2 = W$$

運動エネルギーの変化=された仕事の総和。これはニュートンの運動方程式から純粋に数学操作だけで導かれた定理であり、新しい法則ではありません。だからこそ「運動方程式を時間で追う方法」と「エネルギーで結果だけ比べる方法」は常に同じ答えを出すのです。どちらを使うかは効率の問題にすぎません(9.1節で使い分けを整理します)。

7.3 保存力とポテンシャルエネルギー

力が位置だけの関数 \(F(x)\) のとき、位置エネルギー \(U(x)\) を次で定義します:

$$F(x) = -\frac{dU}{dx} \qquad\Longleftrightarrow\qquad U(x) = -\int F(x)\,dx + C$$

マイナス符号の意味:力は「ポテンシャルの坂を下る向き」に働く。\(U\) のグラフを地形と見なせば、物体は常に谷へ向かって押される、という直感がそのまま数式です。定数 \(C\) は「どこを高さ0とするか」の基準選びで、物理的に意味を持つのは \(U\) のだけです。だからこそ第26・27問のように基準条件(\(U(0)=0\) や \(U(\infty)=0\))が毎回明示されます。

ポテンシャル基準
重力 \(F=-mg\)(上向き正のy軸)\(U=mgy\)\(U(0)=0\)
ばね \(F=-kx\)\(U=\frac12kx^2\)\(U(0)=0\)
万有引力 \(F=-\dfrac{GMm}{r^2}\)\(U=-\dfrac{GMm}{r}\)\(U(\infty)=0\)

※第26問の \(F=+3x\)(原点から遠ざける向きの力)では \(U=-\frac32x^2\) と負のポテンシャルになる。山の頂上に置かれた球のような不安定な状況で、遠くへ行くほどエネルギー的に「低く」なるため、物体はどこまでも加速する。ポテンシャルが負になっても何も異常ではなく、基準からの相対的な高低だけが意味を持つ。

7.4 力学的エネルギー保存則の導出

保存力だけが働くとき、仕事エネルギー定理の \(W\) を \(U\) で書き換えます:\(W=\int F dx = -[U]_{x_1}^{x_2} = U(x_1)-U(x_2)\)。代入して移項すると

$$\frac12mv_1^2 + U(x_1) = \frac12mv_2^2 + U(x_2)$$

すなわち \(E = \frac12mv^2 + U(x)\) は運動の間じゅう一定。運動エネルギーとポテンシャルエネルギーは互いに姿を変え合うだけで、合計は変わりません。投げ上げ(第28問)、ばねで打ち出す小球(第29問)、単振動の振幅の検算(5章・型D)──すべて「2つの瞬間のEを等号で結ぶ」だけで、途中経過の情報なしに答えが出ます。時間を問わない問題ではエネルギー保存が最短ルートです。

7.5 U(x)のグラフで運動を「読む」1.5×

1.5倍レベルの決定的な武器がこれです。全エネルギー \(E\) の水平線を \(U(x)\) のグラフに重ねると、運動の全体像が計算なしで読めます。

E U(x) x 安定平衡(谷) 不安定平衡(山) 転回点 転回点
図7-1 E の線と U の曲線の間の隙間が運動エネルギー ½mv²。曲線が E を超える領域には入れない。交点(転回点)で v = 0 となり折り返す。谷底では傾きが0=力が0(平衡点)。

この読み方を身につけると、「万有引力のU(下に沈み込む曲線)で \(E\ge 0\) なら無限遠へ脱出できる」という第2宇宙速度の条件(第8章)も、図の上で自明になります。

7.6 非保存力があるとき:エネルギー収支1.5×

摩擦のような非保存力 \(F_{nc}\) が混ざる場合、保存則は「収支の式」に拡張されます:

$$\bigl(\tfrac12mv^2 + U\bigr)_{\text{後}} - \bigl(\tfrac12mv^2 + U\bigr)_{\text{前}} = W_{nc}$$

力学的エネルギーの減少分=摩擦が奪ったエネルギー(\(W_{nc}=-\mu'mg\times\)道のり、は変位でなく道のりに比例することに注意──摩擦は往復すれば往復分だけ奪う)。第13問をエネルギーで解き直すと \(\frac12mv_0^2 = \mu'mg\,d\) から一撃で \(d=v_0^2/(2\mu'g)=9.8\) mが出ます。微分方程式で解いた答えと一致する──7.2節で示した通り、両方法は同じ運動方程式の別表現だからです。

CHAPTER 8万有引力と宇宙速度

8.1 \(U(r)=-\dfrac{GMm}{r}\) の導出

万有引力 \(F(r)=-\dfrac{GMm}{r^2}\)(中心向き)は距離で変わる力なので、ポテンシャルは積分で作ります(第27問3と同じ計算):

$$U(r) = -\int F\,dr = -\int\Bigl(-\frac{GMm}{r^2}\Bigr)dr = -\frac{GMm}{r} + C$$

基準 \(U(\infty)=0\) を選ぶと \(C=0\)。あらゆる有限の距離で \(U\lt 0\)──物体は引力の「井戸」の中にいて、無限遠(\(U=0\))に達するには正のエネルギーを外から与えて井戸を登り切る必要がある、という描像が式に表れています。地表付近の \(U=mgy\) は、この曲線を地表のごく近くで直線近似したものにすぎません。

8.2 第2宇宙速度 ── 「E = 0」という境界線

地表(\(r=R\))から初速 \(v\) で打ち出すとき、全エネルギーは

$$E = \frac12mv^2 - \frac{GMm}{R}$$

脱出できる条件は、7.5節のポテンシャル図の読み方そのものです:\(U(r)\) は \(r\to\infty\) で0に近づくので、\(E\ge 0\) なら転回点が存在せず、どこまでも遠ざかれる。ぎりぎりの境界 \(E=0\)(無限遠でちょうど速さ0)が第2宇宙速度を与えます:

$$\frac12mv^2 - \frac{GMm}{R} = 0 \;\Longrightarrow\; v_2 = \sqrt{\frac{2GM}{R}} \approx 1.1\times 10^4\ \text{m/s}$$

注目点:①質量 \(m\) が消える(脱出速度は打ち上げる物体によらない)、②「重力を振り切る」とは力がゼロになることではなく(引力は無限遠まで働き続ける)、エネルギーが井戸の深さを上回ることである、③これは投げ上げ(第14問)で「最高到達点を無限遠にした極限」と読める──到達高さの式 \(h=\frac{v_0^2}{2g}\) の万有引力版です。

1.5倍レベル:第1宇宙速度との対比

地表すれすれの円軌道を回る速度(第1宇宙速度)は、エネルギーではなく力のつり合いから決まります。円運動の向心加速度 \(v^2/R\)(6.4節)を万有引力が供給する条件:

$$m\frac{v_1^2}{R} = \frac{GMm}{R^2} \;\Longrightarrow\; v_1 = \sqrt{\frac{GM}{R}} \approx 7.9\ \text{km/s}$$

すると \(v_2 = \sqrt{2}\,v_1\) という美しい関係が出ます。「回り続ける速度」の√2倍で「振り切れる速度」になる。円運動(第6章)とエネルギー保存(第7章)という2つの道具が、同じ重力の場面で別々の問いに答えている──道具の使い分けの好例です。

CHAPTER 91.5倍レベルの壁を越える思考法

9.1 解法選択のフローチャート ──「微分方程式」か「エネルギー」か

同じ問題でも道具の選択で所要時間が数倍変わります。判断基準は問いの中身です。

問われているもの選ぶ道具理由
時刻 \(t\) での速度・位置、かかる時間微分方程式(第5章の型)時間の情報は \(v(t),x(t)\) にしか入っていない
ある位置での速さ、到達距離・高さエネルギー保存(7.4)始点と終点だけ比べればよく、途中経過が不要
摩擦がからむ距離エネルギー収支(7.6)失われた量=摩擦仕事、で1行
運動の全体像・可能な範囲・折り返しポテンシャル図(7.5)計算前に定性的な答えが見える

1.5倍レベルの問題は、しばしば両方を1問の中で要求します(例:「ばねから離れる速さをエネルギーで求め、その後の減速をODEで追う」)。局面ごとに道具を持ち替える柔軟さを意識してください。

9.2 検算の三点セット ── 答案の質を一段上げる

  1. 次元(単位)チェック:\(\omega=\sqrt{k/m}\) は \(\sqrt{(\mathrm{N/m})/\mathrm{kg}}=\sqrt{1/\mathrm{s}^2}=1/\mathrm{s}\)。指数の肩 \(\frac{A}{m}t\) は必ず無次元。次元が合わない式は、その時点で確実に誤り。
  2. 極限チェック:\(t\to0\)、\(t\to\infty\)、抵抗→0、\(g\to0\) などの極限で、式が既知の単純な状況に退化するか。(例:型Cの解は \(A\to0\) の極限で \(v=gt\) に戻る。)
  3. 初期条件チェック:得た \(v(t),x(t)\) に \(t=0\) を代入し、問題の初期条件を再現するか。10秒でできて最も多くのミスを拾う。

9.3 落とし穴の総目録

符号と定義
積分と方程式
物理的な有効範囲

9.4 最後に:一枚の地図

全体の要約

① 力を全部見つけて運動方程式 \(m\dot v = F\) を書く。② 右辺の変数を見て型A〜Dに分類し、決まった手続きで \(v(t), x(t)\) を得る。積分1回ごとに初期条件で定数を1つ消す。③ 時間が不要な問いなら、運動方程式に \(v\) を掛けて積分した姿であるエネルギー保存・収支に乗り換える。④ ポテンシャル図で全体像を掴み、次元・極限・初期条件で検算する。──この4手順は、プリントの30問にも、その1.5倍の問題にも、大学以降の力学にも、そのまま通用します。公式を覚える勉強から、方程式を立てて解く物理へ。ようこそ。